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三つには、滋賀県およびILECは、これらの国際活動などを通じて、UNEPとは、共同事業として世界の湖沼現況調査を実施し、「世界湖沼データーブック」を出版したほか、湖沼環境保全の実務手引書としての「湖沼管理のガイドライン」ブックをシリーズで発行するなど緊密な連係を図り、UNEPサイドの認識を深め、評価を受けることとなった。また、このような調査・研究を通じて湖沼管理の実態、今後の方向、有効な戦略などについても、多大の情報や知見のストックができた。
四つには、滋賀県が支援するILCEの活動は、前述の事業を始め、トレーニング、ワークショップ、コンサルティングなどの事業のほとんどが開発途上国向けのものであることから、開発途上国への技術移転の必要性とその方策が把握できた。
(3) 大阪市における都市環境問題への対応事例を評価
一方、都市環境の悪化防止と改善面については、大阪府と大阪市が第2次大戦後の復興、その後の飛躍的な産業振興、集中する人口などに伴う都市のスプロール化を見事にクリアーした政策、技術などが国内外において、注目され、評価されてきた。
(4) 滋賀県による国連機関の誘致アピールとUNへの働き掛け
一つには、滋賀県における琵琶湖管理は、世界で3番目に古い湖での一大実験であり、前述のような条例や施策に加えて、基本方策として「琵琶湖環境保全事業」(要綱と同じ。)が策定され、県政の最重要施策に位置付けられ、全庁的な取り組みで積極的・計画的に推進されたことにより、琵琶湖の水質および湖周辺の環境悪化に歯止めがかかり、その後も良化の傾向で推移していることは、湖沼管理の貴重な実例である。滋賀県は、これらの経験と技術を始め、世界の湖沼管理を支援する用意があることを披瀝した。すなわち、琵琶湖という実験台があり、既に実験が進行し、一定の成果が認められつつあり、今後、水質回復と生態系の復元が期待できることをアピールした。
二つには、滋賀県は、UNEP機関の新設および誘致意向について、主要各国に理解と支持を求める活動を行った。特に、ILECが実施している開発途上国向けの各種の事業の必要性や成果を勘案すると、開発途上国に向けてのハードとソフトにわたる環境技術を移転する緊要性があり、これらをより恒常的、計画的、重点的に推進していくには、UNEPが機関を新設して担当するのが喫緊の課題であることを1988年から機会をとらえて、UNEP当局に要請し続けた。
三つには、1989年8月に「地球環境問題の国連関連機関を大阪市に誘致したい。」との西尾大阪市長の記者会見での発言があり、1990年なって大阪市からもUNEPに対し、「国際花と緑の博覧会」(1990年)の跡地に記念的施設とした都市環境問題を担当するUNEP機関の誘致が要請されるようになった。
四つには、国際間においては、ようやく、1990年になって外務省を中心に環境庁を加え

 

 

 

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